教科書の版権に関する東京書籍への問いあわせ
東京書籍からは、大変好意的な回答をいただいております。東京書籍の責任者の武元さま、担当者の宮沢さま、ありがとうございました。
平成18年8月13日 東京書籍宛東京書籍のホームページから下記問い合わせをしました。
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お名前 :濱田恒一
Eメール :naradaisy@gsk.org
都道府県 :奈良
勤務先学校名 :奈良デイジーの会事務局
年 齢 :50 -
教科書名 :中学校社会科用 2 東書 歴史702
対象学年 :中学
対象教科・分野:社会
ご意見・ご質問:18年度4月より、奈良デイジーの会http://www.gsk.org/
では大阪府枚方市の中学2年生のため、教科書をデイジー化し提供しています。この生徒さんは、特別支援教育の巡回相談員がディスレキシアと判断し、この生徒さんに、デイジー化した教科書が有用ではないかとの考えを、学校の特別支援コーディネーターに伝え、生徒さん本人、家族が希望したことから、奈良デイジーの会が、教科書を無償でデイジー化し提供しています。生徒さんは、教科書のデイジー化の継続を希望しており、デイジー化した教科書はとても有効に機能しているようです。
教科書のデイジー化には版権の問題があると思います。ただ、時間と労力を使ってデイジー化した教科書が、ただ一人の生徒さんのためだけに使われるというのは、大変な無駄と考えます。デイジー化した教科書を必要とする生徒さんが使用できれば、ありがたいと思います。具体的には、デイジー化した教科書の公開です。
奈良デイジーの会は、デイジー規格で製作されたデジタル図書を使って読みに困難を抱える人(LD・ディスレクシア)を支援する目的で、2003年5月に結成されました。
私たちは、読みに困難があるゆえに本や学習から遠ざかっている子どもたちに、本の楽しさを知ってほしい、教科書を読めるようになってほしいという願いのもと、彼らを助ける一つの道具として、マルチメディア・デイジー図書を提供しています。(以下デイジー図書はマルチメディア・デイジー図書を指す。)
会員は読みに困難をもつ子どもの親や、教育関係者、医療関係者、図書館関係者等です。
会を設立するにあたり、(財)日本障害者リハビリテーション協会(http://www.dinf.ne.jp)
とNPOデジタル編集協議会ひなぎく(http://www.daisy.gr.jp)よりご指導とご協力をいただきました。
下記 9月4日の東京書籍 教科書質問箱担当 宮澤さま宛のメイルです。
下記に当方団体情報をまとめたものがあります。
https://canpan.info/open/dantai/00000823/dantai_detail.html
奈良デイジーの会事務局 濱田恒一
下記 9月5日の東京書籍からの返事です。
濱田 恒一 様
メールでお尋ねを頂戴いたしました件につき、お答えいたします。
先だって、文部科学大臣から、教科書発行各社に対し、拡大教科書発行に関する協力要望が伝えられました。今回お話のありました「教科書のデイジー化」は、趣旨としては同様のものと思われ、できる限りのご協力をしたいと存じます。
しかしながら、法的な整備が十分ではないために、恐縮ではございますが、些か建て前的なことを申しあげざるをえないところがあります。以下の3点に関しましてご理解をいただきたくお願い申しあげる次第でございます。なお、「デイジー化」につきましての理解が十分でないために、また、「デイジー化」に際して著作権との関係をお考えにならないはずがなく、その点で的外れなことを申しあげてしまう可能性があります。お許し願います。
@ 教科書は、さまざまな著作権者の著作物が集まってできあがっているものです。例えば、歴史教科書であれば、文章そのものについては、特別な部分を除き、発行会社に著作権があると申しあげてよいかと存じます。しかし、歴史教科書に数多く掲載されている写真は、ほぼ100%、写真エージェンシー、神社仏閣、美術館等が著作権を有しているものであり、教科書発行会社は、使用料を支払うことによって掲載許諾を得ています。したがいまして、弱視のかたがた向けに写真等も掲げて作ろうとするのであれば、こうした写真等についての著作権処理が必要になると考えられます。
また例えば、国語教科書であれば、文学的な文章や書き下ろしの文章が数多く掲載されているわけであり、一部の例外を除き、これらの著作権は原著作者が持っています。音声表現によって再生しようとすれば、口述権に関する著作権処理が必要になると考えられます。
つまり、申しあげるまでもないことですが、教科書中の著作物が利用されるにあたっては、教科書会社が許諾できるものと、そうではないものとがあるということです。そうした、教科書会社以外の著作者が著作権を有するものを「公開」するとなれば、許諾を得る必要があることは間違いのないところだと思われます。
ご承知のように、著作権法第33条の2によって、拡大教科書については、非営利であれば教科書発行者に対する通知義務だけが要件として記されているのですが(ただし、教科書発行者に通知するだけで、外部に著作権があるものについても使用して差し支えないとは考えにくいところがあります)、今回お話のあったものは「図書」ではないと思われますので、その範疇には入らないと存じます。
A 各教科書中の、教科書発行会社が著作権を有する部分の著作権については、多くの教科書会社が会員になっている、社団法人教学図書協会に管理を委託しています。したがいまして、どのような条件で許諾できるかは別にいたしまして、申請は教学図書協会に対して出していただくことになると存じます。
B メール中に記しておられた「公開」とは、インターネットによる公開を指しておられるのではないかと想像いたしますが、そうだとしますと、これにはまた別の隘路が存在するのではないかと思われます。間違っているかもしれませんが、以下、その前提で申しあげます。
これも申しあげるまでもなく、ネット上に公開されたデータは、ダウンロードできないような処理を施すなどしない限り、劣化することなく無制限に人手に渡っていく可能性があります。文藝家協会など著作権管理団体が、この面での利用の仕方について明確な規程を示している例が少ないこと、写真エージェンシーが解像度に制限を設けるなどしていることもそれ故であろうと考えられます。
この問題につきましては、教科書も例外ではございません。今回お話のあったような公共性の高い利用の仕方を、同列で論じることには心苦しさを覚えるのですが、デジタル化されたものをネット上に公開するとなれば、上記のような可能性から免れないという実態があります。
結果的に問題点ばかりを並べ立てることになり、誠に申し訳なく存じます。少々大げさではありますが、ネット上での著作物の利用というものは、公共性と権利保護との間で引き裂かれてしまっているように思われます。
見当外れなことを申しあげている部分があろうかと存じます。ご容赦くださいますようお願い申しあげ、以上、ひとまずの回答とさせていただきます。
2006年9月5日
東京書籍株式会社
編集局国語編集部部長
武元 善広
下記9月6日の再度の質問です
東京書籍株式会社 編集局国語編集部部長
武元 善広さま
ご多忙中 おそれいります。また、真摯なご対応 ありがとうございます。
デイジー図書は、各国の点字図書館関係者が録音図書の規格を統一し、資源を共有するために開発し、運用している規格で、マルチメディアデイジー図書はそのマルチメディア版です。国連世界情報社会サミットの公式文書規格として採用され、また、米国でも公式文書規格として採用されています。印刷された文字が読みづらい児、人(ディスレキシア、LD)などをふくめ、誰でも利用できる図書と理解しております。
第35条(学校その他の教育機関における複製等)で、学校その他の教育機関(営利を目的として設置されている ものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。とされており、また、 第43条(翻訳、翻案等による利用)で その翻訳、編曲、変形又は翻案が可能となっております。教科書が、印刷された文字が読みづらい児、人(ディスレキシア、LD)などを含め、誰でも利用できるデイジー図書の形で提供されるまでの間、この複製(デイジー化)を無償で引き受けるのが我々の役割と考えております。
著作権法では,一定の「例外的」な場合に著作権等を制限して,著作権者等に許諾を得ることなく利用できることを定めています(第30条〜第47条の3)が、今回の場合 この「例外的」な場合にあたるのではないかと考えております。
公開に関しては、デイジー化した教科書のリストを公開するという意味で、デジタルデータを公開するという意味ではありません。デイジー化した教科書を使用する教員、児童、生徒が当該教科書を所有し、その教科書で授業が進められていることが、デイジー化した教科書を提供する前提となります。教員、児童、生徒が複製(デイジー化)するにあたり、すでに複製されたものがそこにあれば、作成する時間的、経済的、精神的、肉体的負担が避けられるわけです。奈良のグループ、福井のグループ、札幌のグループ、東京のグループが同じものをデイジー化していたのでは生産的ではないので、お互いのデイジー化した教科書のリスト、デイジー化予定の教科書を公開して、無駄を省くとともに、利用者に情報を提供するという意味です。
非営利であれば教科書発行者に対する通知義務だけが要件とも考えるのですが、貴社のお考えを再度お知らせ願えますでしょうか。
奈良デイジーの会 事務局 濱田恒一
9月6日の東京書籍からの返事です。
濱田 恒一 様
私どもが、権利ばかりを主張しようとしているのではないことは、ぜひご理解いただきたいと存じます。また、濱田様はじめ、デイジー図書制作に携わっておられるかたがたに対し、尊敬の念をはらうことに何ら躊躇を覚えるものではございません。
私どもが心配をいたしますのは、教科書発行者が著作権を有している部分の利用ではなく、むしろ、写真等外部に著作権が存在する部分の利用です。いただいたお手紙に記されていましたように、「デイジー化した教科書を使用する教員、児童、生徒が当該教科書を所有し」ということですから、何ら教科書発行者の利益が損なわれる訳ではありません。しかし、先のご返事にも記しましたが、「教科書発行者に通知するだけで」それ以外の第三者が著作権を有するものについても使用して差し支えないと考えてよいのでしょうか(@)。通知を受けた私どもは、著作権を有している部分について了承できても、著作権を有していない部分についてまで了承できるはずがありません。
各地のグループのかたがたが、同じものを「デイジー化」することが非生産的であることは疑いのないところです。しかしながら、第35条の解釈にしても、加戸守行著「著作権法逐条講義 新版」(平成3年11月15日 新版発行 社団法人著作権資料協会発行)203ページには、以下のような記述があります。
そのような教育機関において複製行為を行いうるのは、教育を担任する者でありまして、「教育を担任する者」というのは、そこで授業を実際に行う人ということであります。たとえば、教育委員会がまとめてプリントを作成してそれを管下の学校に配布するようなことは認められません。教育を担任する職員が複製することを認めるという趣旨であります。もちろん、教育を担任する者といいましても、第30条の私的利用の場合と同様に、実際にはその部下職員である事務員とか児童・生徒を手足として使ってコピーを取らせることは、複製の法律主体が教員自身である場合に限り許されます。(以下略)
この解説に基づいて考えますと、皆様が「教育を担任する者」に該当するか(A)という疑問が残るのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
先のご返事で「法的な整備が十分ではないために」と申しあげましたのは、このあたりのことを言っております。
繰り返し申しあげますが、私どもの権利主張のために書き連ねている訳ではございません。皆様の事業が正々堂々となされるよう、法的な整備がなされればよいと考えております。@Aなどの問題については、文化庁にご確認いただいてはどうかと存じます。
以上、不十分ながらお答えとさせていただきます。
2006年9月6日
東京書籍株式会社
編集局国語編集部部長
武元 善広
下記9月7日の再度の質問です
東京書籍株式会社
編集局国語編集部部長
武元 善広さま こんにちは お世話になります。
権利を主張されているのではないことは、理解しております。
また、著作権につき 了承を得るために通知しているわけではないのです。
通知義務があると考え、通知しているのです。
ですから、著作権を有する部分、著作権を有していない部分にかかわらず、了承していただく必要は無いと考えております。
われわれのグループの中には教員もいますが、今回の場合、複製の法律主体である「教育を担任する者」からの依頼で、教科書をデイジー化しております。
今回、特別支援教育巡回指導員の指導のもと、校内コーディネーター教諭、授業担当教諭、が、奈良デイジーの会に教科書のデイジー化を依頼し、奈良デイジーの会はそれに対応しました。
この成果に関しましては、本年度のLD学会
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jald/
で、下記タイトルで報告予定です。
「教科書のデイジー化と学校での活用」
「特別支援教育巡回指導員、校内コーディネーター教諭、授業担当教諭、奈良デイジーの会の協同による教科書のデイジー化とその活用の報告」
ご存じのように、来年度より、軽度発達障害に対する、特別支援教育が実施されます。これにともない、教科書のデイジー化の需要が急増することが予想されます。マルチメディアデイジー図書の制作研修を受けたものは日本で150名程度で、その生産性は微々たるものです。これを 有効利用したいのです。
御社のご理解をいただければ、大きな助けになると考えてております。何とぞよろしくご配慮のほど、お願い申し上げます。
奈良デイジーの会事務局 濱田恒一
9月8日の東京書籍からのメイルです。
濱田 恒一 様
お考えは理解いたしました。
なさっておられる事業内容からしましても、
やがて、法律がそれに追いつくという展開をたどるのであろうと存じます。
なお、通知にかかわることでございますが、いただいたメールが通知ということなのでしょうか。
やはり、制作主体、対象とする書目等を記した、発行者宛の文書を頂戴すべきであろうと存じます。
その折には、当該教科書奥付をご参照いただきたくお願い申しあげます。
皆様のいっそうのご活躍をお祈り申しあげます。
2006年9月8日
東京書籍株式会社
編集局国語編集部 部長 武元 善広
9月9日の東京書籍株式会社宛メイルです。
東京書籍株式会社
編集局国語編集部 部長 武元善広さま
こんにちは お世話になります。
無視も可能な ネット経由の問い合わせに、真摯に対応していただき、ありがと
うございます。
通知の件、複製の法律主体である「教育を担任する者」から、文書をもって通知
するよう、話してみます。
制作は、授業の進行に間に合うようなテンポでやっております。事後に、一冊の
形に統合することが可能な形式でやっておりますが、今までの制作分の一部、お
送りすることも可能ですが、いかがさせていただきましょうか。
我々の活動は、無償でのボランティア活動です。しかしながら、これは 継続し
てはいけない形ではないかと考えております。早い時期に、教科書のデイジー形
式での配布が制度化され、我々のボランティア活動の必要が無くなる日がくるの
を、心から祈っております。
これからも いろいろとお世話になることと存じますが、よろしくお願い申し上
げます。
奈良デイジーの会事務局 濱田恒一